地球温暖化というと、たいていの人は上、つまり、空をみて、空気が変わったと考えやすいのですが、実際の影響は、地上に起こっています。
地球温暖化や気候変動の問題はどこから始めたらよいのでしょうか。
私はよく、癌にたとえます。癌は、痛みが出ない間は、問題として気づかれないのですが、気づかれる前から癌は進行しているのです。
地球温暖化についても、問題が出ているのは、ここ2・3年です。しかし、20年30年と長期にわたって人間が行ってきたことの結果として問題が出ている。したがって対策を行っても、1年2年では変わらない。長く見ていく必要があります。まず、自分たちができること、1年間、5年間、10年間でできることは何かを考える。また、もっと長い目で見て自分たちの子どもたちは、どのような地球に住むことになるのか、20年先、30年先を考える必要があります。
京都大学でバングラデシュで防災の研究を行っています。バングラデシュの人、主に農業に従事する人々に、「地球温暖化の影響をどう思いますか」とたずねますと、「雨が少なくなっている」という返事がきます。250名中7割から8割の人が、雨が減っていると返事をしました。ところが、実際に雨の調査をすると、年間の降雨量は、増えていました。これは、どういうことかといいますと、年間の雨の量は増えているのですが、農業を行っている人にとって必要なものは、農業にとって必要な雨であり、雨が必要な時期に雨が降っていないということです。
これまでは、5月から6月に、田んぼを準備し、7月に雨が降っていた。しかし、データを見ますと1月2月に降っている。つまり、自分にとって必要な雨が降っていない。生活にかかわる部分の変化が問題となっています。
このように、地球温暖化と防災を考える場合、世界の問題と個人の問題の2つの面から考えていく必要があります。例えば、今日は、トルコから、旱魃の話がありましたが、旱魃は目に見えにくい災害であるといえます。雨が降らなくても、ニュースとして取り上げられない。台風、地震は、目に見えやすい災害ですが。しかし、旱魃はわかりにくい。わかった時点では、すでに遅い。
また、ベトナムのメコン川というと、洪水が問題と思われています。しかし、実際は、旱魃が問題となっています。農業にとって必要な時期に雨が降らないことが問題となっています。これら問題については、それぞれの地域で対策をとっていかなければならないでしょう。また、台風が来る地域では、数は経るかもしれないが、規模が大きくなる心配があります。
今日の発表であったように、自分に何ができるかを考えることはすばらしいことです。電気を消す、シャワーの時間を減らすなど具体的なアクションを起こすことが大切です。
個人個人ができるアクションが、全体の地球温暖化の対策となるでしょう。
環境日記をつけるのもいいでしょう。しかし、たとえば、今日は気分がいいから電気を消すというのでは、それでは足りません。1ヶ月2ヶ月と継続することが大切です。シャワーを、一回5分減らすだけでも、それを継続すれば効果があるでしょう。毎日継続する。
NDYSでは、コミュニケーションを大切にしていますが、それも重要です。言葉の壁を越え、同じ問題に取り組むことが大切です。コミュニケーションとは、人に伝えることです。自分たちの学んだことを人に伝えていくことが大切です。
災害安全マップや、防災マップ作りについてですが、大学での研究テーマとしても、防災マップ作りを行っています。町を歩いて、きれいなマップを作って1回やって終わるのではない。どうやって続けていくのかが問題です。インドネシア、マレーシアなどで、1年かけてマップを作る研究を行っていますが。いろいろな苦労もしています。マップを作る際には、自分の周りの危ないところだけでなく、自分の町の良いところも見ていく。どこを誇りに思うか、地域の自治会長さんとも話をする。どうしても、良いところが、当たり前になっていて、見えてこないということがあります。次にマップを作る際には、その地域のよいところ、誇りに思うところも、入れてほしいと思います。
最後に、NDYSでは、小・中・高校が活動を行っていますが、京都大学では、バングラデシュ、インド、マダガスカル、フィリピン、ベトナムなど6カ国から留学生を迎えています。是非、小・中・高校と大学生が話し合える機会を作っていきたいと思います。
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